【後編】各駅物語 Vol.6 北の大地で2回疾走した空港駅~千歳線・新千歳空港駅~

【後編】各駅物語 Vol.6 北の大地で2回疾走した空港駅~千歳線・新千歳空港駅~

旅行で利用した新千歳空港。

なぜか2度も空港内を疾走する羽目になってしまった。

今回は【後編】。帰京する際の話だ。

↓前編はこちらからどうぞ↓


執筆:あざらしくん

慶應義塾大学在学中・理系・水族館愛好家

全国の水族館を巡りながら、まだ見ぬ日本を求めて日々迷走中

Vanilla Airはいよいよ合併吸収される。

Peachの機体 Photo by Azao Mart

今回の旅行の一番の肝というのは実はVanilla Airに搭乗することだった。

Vanilla Airは白と黄色を基調とする機体が特徴のLCCだった。

成田空港を拠点として札幌・函館・奄美・那覇・石垣などを結んでいた。

搭乗の日付は2019年8月31日。

Vanilla Airの新千歳=成田便の最終運航日だ。

私が予約していた飛行機は19時50分発。

この日の最終フライトだった。

つまり新千歳空港を離陸する最後のVanilla Airフライトだ。

自然現象は時に残酷だ。

JR北海道特急列車 Photo by Azao Mart

その日の行程は午後、旭川より特急ライラックで札幌へ出て、そのまま空港へ向かう予定だった。

旭川の天候は晴れ。

科学館を見学したあと、駅の近くで昼食をとっていた。

何の気なしにSNSをチェックしていると、“函館本線運転見合わせ”と出てきた。

急いで駅に向かってみると、なんと岩見沢駅付近でゲリラ豪雨が発生し線路が冠水してしまったとのこと。

特急はおろか普通列車も運転見合わせ。さらに高速道路も冠水し、高速バスも大幅遅れとのことだ。

乗る予定だった時刻よりも1時間以上早かったが、まだ動いている高速バスに乗ることに。

途中で通行止めが解消され、かなり遅れながらも札幌へ向かうことはできた。

LCCという大きなワナ。

LCCではタラップから乗り降りすることも多い Photo by Azao Mart

LCCとは「Low Cost Carrier」つまり格安航空会社の略称だ。

とはいえ安全性に問題があるわけではない。

座席幅を狭くする・機内サービスを省略する・手荷物制限をする・機体を統一するなどの工夫を行って低価格を実現している。

このうち実は搭乗手続きにも制限がある。

LCCでは原則出発の35分前までにチェックインをしなければいけない(2019年当時)。

これを過ぎると一切の手続きを受けることができないのだ。もちろん飛行機に乗ることはできなくなる。

さらに今回は夜間のフライトということで、カウンターも閉鎖されてしまう。

ANAやJALは専用のカウンターを持ちスタッフが常駐しているため、事情を説明すれば別途対応してもらえることがある。(もちろんこれを当てにして遅く空港に到着するということはあってはならないが)

一方でLCCのカウンターには実体がなく、専用のダイヤルを持たないのである。したがって電話で問い合わせるということが基本的にできない。

何かイレギュラーなことがあれば現場まで向かってスタッフを捕まえる以外に術がないのだ。

3956M 快速エアポート188号 新千歳空港行

千歳線快速エアポート Photo by 中村 昌寛

実際に2019年8月31日に私が札幌から乗車した列車だ。

当時同じ列車に乗り合わせた人がいれば、もしかしたら汗だくの私を見かけているかもしれない。

この列車の新千歳空港到着は19:26。

飛行機の出発は19:50。

Vanilla Airのダイヤルは既に営業終了している。

あとは空港に着いてからカウンターに駆け込む以外に希望はない。

かくして2度目の新千歳空港ダッシュは幕明けた。

終わりゆく空港で途方に暮れる。

Vanilla Airの機体 Photo by Azao Mart

結論から述べると、私は今回の旅のメインディッシュであった、Vanilla Air新千歳最終フライトに搭乗することはできなかった。

新千歳空港駅に着くなり、チェックインカウンターまでノンストップダッシュを決めるも、そこはただただがらんとしていた。

その日の最終便を見送った空港カウンターは、翌日から新たにPeach Aviationとしてお客さんを迎え入れるための準備を始めようとしていた。

その周りにVanillaのスタッフはおらず、走った甲斐もむなしく最終フライトは空席を残し離陸していった。

翌日には別の用事を控えていたため、なんとしても東京には帰らなければならない。

しかし、8月の末日ということもあり夜の飛行機はほぼ満席だった。

半分泣きそうになりながらスマホで各航空会社の空席照会を探した。

捨てる神あれば拾う神あり。

SKYMARKの機体 Photo by Azao Mart

ANAやJALは残されたわずかな便も満席か5万円を超えるような高額な航空券しか残されていない。

そこにスカイマークの最終便が残されていることに気が付いた。

いそいでカウンターへ駆け込み、最後の2席をぎりぎりのところで確保した。

SKY730 21:00発。

それでもかなり航空券代は値が張ったが、無事に東京まで帰ることができた。

今回の旅の教訓は、LCCを利用する際はかなり余裕をもって空港に着いておくべきだということだ。

みなさんもLCCは十分注意して利用してほしいと切に思う。