各駅物語 Vol.2 同じ運転手のバスに乗り合わせる確率~伊豆急行・伊豆急下田駅~

日本全国には約2700のバス事業者があり、日々数えきれないほどのバスが運行されている。
もちろん同じ運転者が他社のバスを運転することはまずない。
それを加味しても、同じ運転手のバスに偶然複数回乗り合わせることは珍しいだろう。
そんな偶然の奇跡に関するお話。
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執筆:あざらしくん 慶應義塾大学在学中・理系・水族館愛好家 全国の水族館を巡りながら、まだ見ぬ日本を求めて日々迷走中 |
休暇で南伊豆町へ

季節は秋。日々の生活に疲れてきたこともあり、週末を利用して南伊豆へ休暇旅行へ出ていた。
今回の物語は、そんな南伊豆を観光していたときにおはなし。
1日目は伊豆急行線を利用して、伊豆熱川や河津七滝を散策してきた。
休暇旅行とはいえ、かなりの距離の散策路を歩いたので足は疲れていた。早々に宿へ引き揚げ体を休める。
南伊豆町の少し名の知れた宿泊地で疲れを癒していた。その宿は、目の前にバス停があり、車を持たない私でも楽にアクセスできることから選んだ場所だ。
休暇2日目、バスで石廊崎を目指す。

ぐっすり眠り、2日目もせっかくなので伊豆を観光してから帰京することに。まずは宿から比較的近い伊豆半島南端部の景勝地、石廊崎を目指す。
この写真は偶然宿を後にするときに撮影した写真だ。この青色の広告をつけたバスが物語に主役になることをまだ私は知らない。
石廊崎まで行くこのバスに揺られる。
石廊崎は2度目の訪問であり道はもうわかっている。
この絶景である。想定はしていたがかなりの強風である。
帰路も同じバス。

石廊崎から一旦伊豆急下田駅まで戻ることに。駅を拠点にして、下田市内を散策することにした。
帰りのバスは同じ車両、同じ運転手だった。
実は石廊崎行きのバスは、終点に到着後行先を変え、吉祥のあたりまで延長運行していた。その折り返しに乗り当たっただけなので当たり前といえば当たり前だ。
バスに揺られ眠りながら駅へ戻った。
まだこのバスに愛着はない。
同じバスで水族館へ向かう。

伊豆急下田駅に到着し、水族館行きのバスを待った。
すると偶然にも同じバスが折り返してきた。
少しうれしい気分になる。
帰路もまた同じバス。

水族館を堪能したが、まだ帰りの列車までは時間がある。
再び伊豆急下田駅へ戻るためにバス停で待っていると、見覚えのある青い広告をまとったバスが入ってきた。運転手も同じであった。
私は明らかに「観光客」であったため運転手もこちらは認識していたであろう。
私もさすがに偶然が重なるなと思って、この青い広告をつけたバスに馴染みを覚えた。
そして奇跡、いや運命の乗り損ね。
伊豆急下田駅に到着した。このころには私はこの車両、そして運転手をどこか目で追ってしまうようになっていた。
そのバスは蓮台寺行きの方向幕へ切り替えたのを確認した。
蓮台寺へは行く用事はない。
いや、そのバスにつられて蓮台寺へ行ってみたい気持ちもあったが、私は海が見たかったので白浜へ行くバスを待つことにした。
いよいよ愛車ともお別れだ。ほどなくして蓮台寺へ向けて出発していった。
伊豆急下田駅の前には誰でも利用できる足湯が整備されている。
足だけ湯につかりながら、バスを見送っていると、あろうことか白浜へ向かうバスも出発してしまったのだ。時刻を10分勘違いして記憶してしまっていたのである。
反動で湯から上がったものの、白浜へ行くことは叶わなくなってしまった。こんなことなら運命に身を任せ蓮台寺へ行けばよかった。
そして夕暮れ。

仕方なく駅から歩いて行ける海沿いの公園へ向かうことに。
道の駅も併設されている「まどが浜海遊公園」。また足湯があったので港を眺めながらゆったり時間を過ごした。
そして列車の時間が近いので今度こそ伊豆急下田駅に戻ることに。
最寄りのバス停で待っていると。
ん,,,???
青色の広告をまとったバスが向かってくる。
まさかと思いながら前扉があくと、これまで散々お世話になった運転手が驚いた表情でこちらを見ていた。
あえて蓮台寺行きを外したうえでの再会は偶然にしては奇跡に近い。
公園は駅まで歩いても帰れる距離ではあったため、すぐに駅に到着。
今日一日分の御礼を告げて下車した。
1日のうちに5回も同じバスを引き当てる確率はいかほどなものか。
18:01
伊豆急行の普通列車伊東行は偶然の奇跡を残して出発。伊豆急下田駅は私にとって忘れることのない思い出の駅となった。
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